AI時代にデザイン思考が必要な理由|人間にしかできない「問いを立てる力」とは

はじめに

ChatGPT、画像生成AI、コーディングAI——2025年、生成AIは私たちの仕事のあり方を根本から変えつつあります。

「AIがあれば、もう人間が考える必要はないのでは?」

そんな声も聞こえてきます。しかし、私たちはむしろ逆だと考えています。AIが進化すればするほど、デザイン思考の価値は高まる。

なぜなら、AIが得意なのは「与えられた問いに答えること」であり、「何を問うべきか」を決めるのは、今もこれからも人間の仕事だからです。

本記事では、AI時代にデザイン思考がなぜ重要なのか、そして企業や教育機関がどう活用すべきかを解説します。


AIにできること、できないこと

まず、生成AIの現在地を整理しましょう。

AIが得意なこと

  • 大量の情報処理と要約: 数千ページのドキュメントを瞬時に分析
  • パターン認識と予測: データから傾向を見出し、最適解を提示
  • 反復作業の自動化: リサイズ、色調整、レイアウト生成
  • アイデアの大量生成: 100のコピーを数秒で生み出す

AIが苦手なこと

  • 「そもそも何が問題か」を見つけること
  • 人の感情や文脈を深く理解すること
  • 倫理的な判断を下すこと
  • まだ存在しない未来を構想すること

ここに、デザイン思考の出番があります。


デザイン思考が「AI時代の必須スキル」である3つの理由

理由1:「正しい問い」を立てる力

AIは「この問いに対する最適な答え」を高速で出してくれます。しかし、問いそのものが間違っていれば、どんなに高精度なAIでも的外れな結果しか出ません。

デザイン思考の最初のステップである「共感(Empathy)」と「課題定義(Define)」は、まさにこの「正しい問い」を立てるプロセスです。

例えば:

  • ❌「どうすれば社員の生産性を10%上げられるか?」(AIが答えやすい問い)
  • ✅「なぜ社員はやりがいを感じられていないのか?」(人間が立てるべき問い)

後者の問いから始めることで、AIでは到達できない本質的な課題に辿り着けます。

理由2:「人間中心」の視点がAI活用の質を決める

AIを導入する企業は増えていますが、うまくいくケースとそうでないケースがあります。その違いは何か?

「誰のために、何を解決するのか」が明確かどうかです。

デザイン思考は、テクノロジーの可能性(Technology Feasibility)やビジネスの合理性(Business Viability)だけでなく、**人が本当に望んでいること(Human Desirability)**を起点にします。

AIという強力なツールを手にした今こそ、「何のために使うのか」という人間中心の視点が不可欠なのです。

理由3:「試行錯誤する力」が組織の競争力になる

AI時代の特徴は、変化のスピードが圧倒的に速いことです。昨日の正解が今日の不正解になる世界では、完璧な計画を立てることよりも、素早く試して学ぶ力が重要になります。

デザイン思考の「プロトタイプ(Prototype)」と「テスト(Test)」は、まさにこの力を養うプロセスです。

AIが生成した100のアイデアの中から、どれを選び、どう形にし、どう検証するか——この「編集力」と「実験する勇気」は、人間にしか持てません。


AI × デザイン思考の実践例

企業での活用

ある大手製造業では、AI分析で顧客データから離反リスクの高いセグメントを特定。その後、デザイン思考のアプローチでそのセグメントの顧客に深くインタビューを行い、AIだけでは見えなかった「不満の根本原因」を発見しました。

結果として、表面的な値引き施策ではなく、顧客体験そのものを再設計することで、離反率を大幅に改善。AIの分析力とデザイン思考の共感力が掛け合わさった好例です。

教育での活用

さいたま市教育委員会との連携プロジェクトでは、約10万人の生徒を対象に、デザイン思考を活用した探究学習プログラムを展開しています。

AI時代に求められる「自ら問いを立て、仮説を検証し、新しい価値を創造する力」。これはまさにデザイン思考のプロセスそのものであり、教科の枠を超えた21世紀型スキルの育成につながっています。


AI時代に求められる人材像

経済産業省も「DXレポート」で、これからの時代に必要なのは「課題設定力」と「創造的思考力」であると指摘しています。

デザイン思考を身につけた人材は、以下のような力を発揮します:

  • 観察力: 数字の裏にある「人の行動や感情」を読み取る
  • 問い立て力: AIに正しい指示を出すための「本質的な問い」を設計する
  • 共創力: 多様なバックグラウンドのメンバーと協働してイノベーションを生む
  • 実験力: 失敗を恐れずプロトタイプを作り、素早く学ぶ

これらは、AIには代替できない「人間固有の能力」です。


まとめ:AIを「道具」として使いこなすために

AI時代のイノベーションは、テクノロジーだけでは生まれません。

「人を起点に、正しい問いを立て、素早く試す」——このデザイン思考のプロセスが、AIという強力なツールを正しい方向に導く羅針盤になります。

正解のないVUCA時代だからこそ、変化を恐れず学び続け、挑戦し続ける力が求められています。デザイン思考は、個人・組織・地域が、自ら未来を切り拓く力を育みます。


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この記事は一般社団法人日本デザイン思考協会が、デザイン思考の普及と実践を目的として執筆しています。

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